正式名は"ヘリコバクター・ピロリ"と言い、ヘリコとは「らせん」とか「旋回」という意味です。
ひげの部分も回転させて移動します。バクターとはバクテリア(細菌)。ピロリとは胃の出口(幽門)をさす「ピロルス」からきています。この菌は胃の幽門部から初めて見つかりました。ピロリ菌の最も大きな特徴は、酸素の存在する大気中では発育しないことで、酸素にさらされると徐々に死滅します。乾燥にも弱く、グラム陰性桿菌に分類されます。
大きさは0.5×2.5~4.0μmで、数本のべん毛を持ち、胃の中を移動します。
ピロリ菌が強酸性下の胃の中で生育できるのは、胃の中にある尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解し、アンモニアで酸を中和することにより、自分の身の周りの酸を和らげて生きています。
胃の壁を傷つけ、胃の守っている粘液を減らし、酸の攻撃を受けやすくしてしまうので、胃炎や消化性潰瘍を発症させる要因になります。ピロリ菌が胃壁に取り付くと細胞を弱めてしまう毒素を出し始めます。
すると菌をやっつけようと血液中の白血球が付近に集まります。
両者の戦いが大きくなると、胃粘膜の消耗を早め、粘膜が炎症を起こして胃炎になったり、胃や十二指腸の粘膜が深くえぐられて消化性潰瘍になったりすると考えられます。
また、胃がんは毎年約25万人発見されており、そのほとんどがピロリ菌感染者です。
ピロリ菌の陽性者は胃がんのリスクが約5倍で、慢性胃炎が進むとさらにリスクは高まります。ピロリ菌の早期発見のためにもまずは検査をおすすめします。
ピロリ菌の感染率は衛生環境と相関すると指摘され、60代以上の日本人の60%以上がピロリ菌に感染しているといわれています。ピロリ菌の感染経路はまだはっきり解明されていませんが、幼少期、免疫力の十分でない頃、親からの口移しによる経口感染が主な経路と考えられています。また、上下水道が整備されていないような地域や国では感染率が高く、先進国の中では日本は際立って高い感染率です。
■ 尿素呼気試験法
尿素を含んだ検査薬を内服し、服用前後で呼気に含まれる二酸化炭素の量を比較する検査方法です。ピロリ菌に感染していると、ピロリ菌が放出するウレアーゼによって、胃で尿素がアンモニアと二酸化炭素に分解され、二酸化炭素の量が感染していないときに比べて多くなります。
尿素呼気試験法の検査方法はとても簡単です。
- 息を検査バッグに吹き込みます。
- 尿素を含んだ検査薬を飲み込みます。
- 再度、息をバッグに吹き込みます。
■ ピロリ抗体もしくは抗原測定法
血液・尿もしくは便に含まれる、ピロリ菌に対する抗体や抗原の有無を調べる検査です。陽性であれば、ピロリ菌に感染していると診断できますが、偽陰性といって、感染していても陽性と出ないことがあります。その場合、他の検査を追加して確認することも出来ます。
■ 内視鏡を用いる検査法(※内視鏡は予約検査となります。)
◎ 迅速ウレアーゼ法
ピロリ菌はウレアーゼという酵素を分泌し、尿素を分解します。内視鏡時に胃粘膜組織を採取して、ウレアーゼの反応をみる検査です。早ければ20分程度で結果が判明し、高い特異性を有しています。
◎ 鏡検法
胃粘膜の生検組織をHE(ヘマトキシリン-エオジン)染色あるいはギムザ染色により染色固定し、顕微鏡でピロリ菌の有無を観察する検査です。
◎ 培養法
胃粘膜の生検組織から、ピロリ菌を培養し有無を確認する検査です。
平成25年2月から保険で認められるピロリ菌除菌療法の適応疾患が拡大され、従来の胃潰瘍などに加え、ピロリ菌による胃炎に対しても保険で除菌が可能となりました。
ピロリ菌が原因で胃炎や胃潰瘍などを起している場合は、ピロリ菌を除菌する治療を行います。除菌は、胃炎の進行、がんの発生予防、潰瘍の再発防止に有効です。胃のポリープを縮小、消失させることも期待できます。血小板減少性紫斑病という血液疾患への効果も証明されており、他、慢性蕁麻疹、若年の貧血などへの関与もいわれています。
方法は、胃酸を抑える薬と抗生物質2種類を1週間服用します。約8割は成功しますが、失敗しても2次除菌として抗生物質の種類をかえれば、ほとんどの方は除菌されます。(3次除菌のご相談も可能です。)一度除菌されれば再発、再燃することはごくまれです。
■ ピロリ菌の除菌治療は以下の流れとなります。
- 感染診断
ピロリ菌感染の有無を採血や胃カメラで調べます。 - 結果説明・処方
感染診断の結果をご説明し、陽性の方には除菌薬を処方いたします。 - 副作用を確認
除菌薬による副作用の有無(下痢や味覚異常など、通常は軽度で一過性)に注意していきます。 - 除菌効果判定
除菌終了後2ヶ月頃に、ピロリ菌が完全に死滅したかどうかを尿素呼気試験で調べます。 - 結果説明
除菌効果判定の結果をご説明します。
除菌成功の場合は終了となり、不成功の場合は2次除菌についてご説明いたします。
除菌後でも、それまでのピロリ菌の影響が残り、がんの発生などがないか年1回の胃カメラをお勧めします。
なかや内科医院
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